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2005年 06月 07日
チャンピオンズリーグ、リバプール奇跡の大逆転
チャンピオンズリーグ、リバプール奇跡の大逆転_e0068849_2020551.jpg 「なんてこった。今日の試合はこれで終わった。いい写真なんかありゃしない」
 前半を終わって、3対0。得点があったゴールとは反対側にいた私と、知人カメラマンの間ではこんな会話が始まった。「後半はACミランが守りに徹して攻めてこないから、必死になって反撃するリバプールという試合展開かね」つまり、私たちは、前半リバプールが攻める側のゴール裏にいて、ACミランの3回のゴールシーンは遠く離れた反対側からしか撮影していなかった。しかも、選手の後姿。
 皆さんは、それなら後半、リバプールの攻撃を撮ればよいだろうと考えるかもしれない。だが、私たちのカメラマンの大半は、リバプールやミランの地方版の新聞を除いて、両者の写真が必要なのだ。リバプールの攻撃を撮りに行って、もし、ACミランがカウンターアタックで1点を追加したなら、その写真が必要なのだ。
 したがって、私と同じ側にいたカメラマンのほとんどは、あきらめムードでありながらも、ポジションを移動しようとはしなかった。

 ところが後半が始まると、様子が一変。前半はまったく良いところがなかったリバプールが徐々にペースをつかむ。反撃の1点は、キャプテン、ジェラードのヘッド。しかもノーマーク。ACミランはおそらく3点のリードで1、2点取られても、これなら追いつかれることはないだろうと油断していたのかも知れない。2点目も、まったくプレッシャーのない中央からシミッチェがミドルシュート。2点を取って、大いに盛り上がるリバプールサイド。たたみかけるように6分でリバプールは3点を取り返した。信じられない。3対3になったことよりも、1試合で6点も反対側のゴールで得点が決まったことがだ。私の隣にいたイングランドのカメラマンは、1週間前のUEFAカップ決勝でも同じサイドにいた。スポルティング・リスボン対CSKAモスクワの戦いは、ホームスタジアムのスポルティングが先取点を取ってリード。後半、追いついたCSKAは、攻めまくるスポルティングをあざ笑うかのように、カウンターアタックでさらに2点をもぎ取った。この試合、3対1でCSKAが優勝したのだが、4点とも私たちがいたサイドと反対側のゴールで得点が決まった。
 イングランドのカメラマンが嘆く、「ヨーロッパのカップ戦の決勝2試合で10点全てが反対側のゴールなんてありえるか?」彼はこの言葉に続いて信じられないことを発した。「ミラン!俺の側で得点しろ。そうすれば今までの6点はチャラになって、この1点が試合を決めるゴールで、新聞のトップを飾る写真になるんだ!」
 自分の国のチームの勝利を忘れて、彼は自分の写真が一面を飾ることを考えていた。その言葉に私も、目が覚めたように、うなづいた。
 「そうだ。そのとおり。ここでミランが1点を取れば、試合を決定するゴールとして一番大事な写真になる」スパルティーバのコラムで、リバプールが勝つことを応援していた私も、自分の写真が売れることを考えて、急遽ミランを応援し始めていた。
 だが、ミランもリバプールも追加点を奪えず、延長戦へ突入。ここでもイングランドのカメラマンと私はポジションを変えず、今度はリバプールが私たちのサイドでゴールすることを祈った。まったく私たちカメラマンもいい加減なものだ。

 試合は、延長戦でも決着がつかず、PK戦に突入。この時点で、敗戦濃厚な状況から追いついたリバプールが、精神的に有利に立つ。一方、勝ったと信じ込んだミランにすれば、ここで負けてはというプレッシャーが大きいはずだ。案の定、最初の2人が失敗。
 5人目のシェフチェンコは、年末バロンドール(ヨーロッパ最優秀選手)に選ばれた。2年前の決勝では、ユベントス相手に同様のPK戦で最後のキッカーとして勝利を決めた。
 だが、イスタンブールでは、敗者のキッカーとなってしまった。

 これからは、イングランドの時代がやってくるだろう。ヨーロッパのサッカーシーンは5年から長くて10年の周期で最高峰リーグが変遷してきた。チャンピオンズカップ(チャンピオンズリーグの前身)の勝者で時代を振り返ると、70年代はオランダからドイツへ。70年代後半から80年代前半はイングランド。80年代後半から90年代前半はイタリア。そして90年代後半から2000年初めはスペイン。
 サイクルは回って、サッカーの母国、イングランドの時代が再びやってくる。チャンピオンズリーグでは準決勝でリバプールに惜敗したが、プレミアリーグとリーグカップの二冠に輝いた、モウリーニョ監督率いるチェルシー。そしてプレミアリーグは5位に終わったが、チャンピオンズリーグでは、サッカーファンを仰天させる活躍で見事に優勝した、ベニテス監督率いるリバプール。
 この両者が、来シーズンのプレミアリーグの優勝争いを繰り広げるに違いない。そしてどちらかが、チャンピオンズリーグの決勝にやってくるだろう。
 アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドは優勝争いに加わるだろうが、チェルシーとリバプールには水をあけられ、ひとつの時代が終わった事を意味するシーズンになるだろう。

by kaz-photo | 2005-06-07 00:00 | サッカー


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